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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「……っはっ……はあっ」
俺は洗面所で水を出しっぱなしにしながら込み上げる吐き気と闘っていた。
下を向き、口を大きく開けても出るのは嗚咽と咳ばかりで、空っぽな胃からは何も出てこない。
なのに、内蔵が全部出てしまうのではないか、と思う程の痛みに呻く。
昨夜、清崎からのメールを読んで気分が悪くなり倒れてから、水以外何も身体が受け付けなかった。
あの文面だけでは何も真実は分からない。清崎の勘違いなのかも知れない、とも思ったが、彼女は嘘をつくような人ではない。
実際、森本は菊野に興味津々なのだ。
彼女を誘ったとしても不思議はない。
だが、菊野が彼に言われるがままに誘いに乗ったりするだろうか?
あんなに恥ずかしがりやで、大人しい少女のような彼女が、俺以外の少年と遊び目的で身体を重ねたりするわけがない。
いや、頼りなげな彼女だからこそ、拒否出来ずにいるのかも知れない――とも思った。