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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
『あんっ……』
「――っ」
突如、俺の腕の中で淫らに、艶やかに乱れる彼女が脳裏に蘇る。
そうだ。彼女は幼く頼りなげでも、俺よりずっと大人の女性だ。
彼女を恋の言葉と身体で夢中にさせていたつもりが、実は彼女の方が先に褪めていたのだ。
証拠に、俺に冷たい言葉を浴びせたじゃないか。
いや、最初から俺を弄ぶつもりでいたのだろうか?
『剛さん……私をママって呼んで』
『剛さん、どう?おいしい?ミートパイ、好きよね……?』
『いった――い……また、剛さんのピアノに聞き惚れて指切っちゃった……』
「……く……っ……菊野……っ」
次から次へと、無邪気な彼女の仕草が、表情が浮かんでは消えて俺を苦しめる。