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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
『この家に来なければよかったんだよ!』
祐樹の叫びが過るが、今目の前で悲しい顔をして立ち尽くす姿に、恨み言などをぶつける気にはなれなかった。
正直、菊野は勿論、祐樹に会うのも怖かった。
だが、いつものように声を掛けてきてくれた事が有り難かった。
一瞬唖然としたが、まるでこの間の事がなかったのかと錯覚してしまう程に祐樹の態度は自然に見えた。
しかし、能天気に見える祐樹でも、罪悪感をおぼえていたのだろう。
俺は溜め息を吐いて、身を屈めて祐樹と同じ目線になると、彼の額に思いきりデコピンしてやった。
「ってえ――!剛、お前指が長いんだからそれやられるとマジで痛いんだから――!!」
額を押さえて目を剥く彼の頭を軽く叩き、俺は何でもないように言った。
「さあ、無駄話してる暇はないだろ、行くぞ」