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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「パパ、もうお話出来るかなあ」
「どうかな……出来るといいな、祐樹」
「うん……!俺、パパに話したいことたーくさんあるんだ!」
祐樹は弾む足取りで病室へ向かう。
「病院の中を走るなよ」
注意しながら、今更ながら祐樹と自分の中の温度差を感じていた。
祐樹はとても嬉しそうだった。当たり前だろう。意識が戻らなかった父親が快復したのだから。
だが、俺は自分の親が事故で亡くなったと知ったとき、悲しいともなんとも思わなかった人間だ。
ごく当たり前の感情が、俺には欠けている。
その事実に俺は軽く打ちのめされていた。
俺は、皆と共に悟志の快復を祝えない。
菊野を奪い去られてしまう――そんな嫉妬と焦りの方が先に立って、心から彼に笑えない。