この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「悟志さっ……」
菊野が小さく叫び絶句するのが聞こえ、皆がざわついている気配を感じながら、俺はフラフラと後ずさった。
悟志が、俺を忘れた――?
あんなに、俺に嫉妬の感情を剥き出しにしていた彼が――?
「パパ!笑えないボケだってば!ビックリさせないでよ――!!」
祐樹の高い声が聞こえ、真歩の困惑ぎみな呟きも耳に入る。
「……お医者様は、意識がなくて一月以上いた後遺症がひょっとしたら出てくるかも……て言ってたわよね」
「まさか……それで、剛くんの事を?」
「で、でも一時的かも知れないわよ!
明日になれば思い出すかも」
真歩に貴文、花野の声も聞こえるが、現実感だけが遠退いていく。
俺は本当に今、ここに居るのか?
この震える手も、寒気を覚える身体も実は俺の物でなく、借り物なのでは無いだろうか?――と思ってしまう程、俺は解離していた。