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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
俺は、吐き気と悪心を遣り過ごすので一杯で、病院の中の様子まで構って居られなかったが、彼女が声をひそめて教えてくれる。
「……お母さんと、おばあちゃんかな?
祐樹くんの後を追い掛けてきて、何か三人で話してるけど……」
「……」
「西本くんを探してるんだよね?
……戻らなくていいの?」
「俺は……っ……」
言葉にしようとすると、何か大きな塊が喉までせりあがって来るような感覚に囚われて何も喋れず、咳き込む。
夕夏の柔らかい手が背中を擦っていた。
「西本くん、ひょっとして、帰りたくないの?」
「……わ……から……なっ……」
「ああ、大変そうだね。いいよ、喋らなくて」
また咳き込む俺に彼女はキッパリと言うと、
「ちょっと待って」
と言い、袋からペットボトルの水を取り出すと蓋を開けて俺に差し出してくる。
「飲んで」