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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「西本君……?」
「……岬さん」
俺は、肩で呼吸をしている上に声が上擦り、視線も定まらない。
傍目から見ればまともな状態では無いのだろう。
夕夏は俺に何と声を掛けようか、と考えあぐねている様に見えた。
壁に手を付き伝い歩く様にしながら、彼女にお辞儀をしてその場を離れようとした時、祐樹の高い声が聞こえてきた。
「剛――!!何処へ行くんだよ!!」
祐樹は叫びながら辺りを見回して俺を探している。
俺は大きく身体を震わせ、込み上げる吐き気を抑えようと口に手を当てて目をギュッと瞑った。
すると、細い腕が俺を引っ張り、売店横の自販機の陰へ連れていく。
夕夏は俺に向かって目配せをし、自販機の陰から病院の中の祐樹の様子を窺っている。