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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行
「ふ――ん、似合うね」
夕夏は、風呂から出てきた俺を上から下までマジマジと見て満足そうに呟き、だが俺が少し引いた様に見えたのだろうか。
さっと頬を赤く染めると、タオルと自分用のパジャマを持って俺と入れ替わりに洗面所へ行き、ドアをバタンと音を立てて閉める。
「西本君、うちテレビないから、暇ならその辺にある本でも見てていいから――」
ドアの向こうから、衣擦れの音と共に彼女の声がする。
俺は彼女に言われるまで気が付かなかった。確かに、この部屋にはテレビはなく、学習机の上にパソコンが置いてあった。
カラーボックスの中の雑誌を適当に探ってみるが、俺が今まで目にした事のない類いの本ばかりだった。
『Pocking Japan』や『POTI―POTI』なら雑誌の名前は聞いた事がある。
クラスの話もしたこともない奴らだが、学校に雑誌を持ってきては、カタカナの名前のバンドの話題で盛り上がっているのをよく見掛けた。