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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行
――俺は本当に馬鹿に成り下がっているらしい。
ラブソングに感極まって涙ぐむなんて、女の子だけしかしない事だと思っていた。
俺は自分を守るために、自分の感情をコントロールする術を、身に付けているつもりだったが、とんだ勘違いだ。
何も思い通りにならない。
彼女に焦がれるこの胸も、欲しいと哭いてしまう身体の中心も、彼女を知らず知らずに追ってしまうこの忌々しい目も、彼女の声に酔ってしまうこの鼓膜も――
平静になれ、彼女にこれ以上惹かれたら、恋したらいけない、とどんなに言い聞かせても、従ってくれない。
いつかこの毒も体内から消えて無くなってくれるのだろうか?
彼女への想い、それは最早俺を苦しめる物でしか無くなっている。
あっさりと引き下がれる程度の想いだったなら、どんなに楽だったろうか?