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愛しては、ならない
第46章 小さな逃避行②
「……そしたら、西本君、あの清崎晴香っていう美少女と付き合ってるって言うじゃない。
私はそこで即失恋したわけよ」
「いや……その」
「西本君て、あのスーパーお坊っちゃまの森本君とも仲良しだし、お母様ともただならぬ物を感じるし……
私からすれば……その辺の高校生とは実力が違うっていうか、やるなお主!……て感じなのよ」
彼女にビシッと指差され、俺はポカンとする。
「実力て……」
俺は、自分ほど複雑なバックボーンを持つ人間はあまり居ないのではないか、と思っていた。
認めたくないが、自分の事を『不憫な少年』とカテゴライズしていたかも知れない。
異常な両親の事も、義理の母の菊野に恋し、それを失いそうな事も、彼女が経験した恐ろしさと比較も出来ないし、どちらがどう、とは言えないのだろう。
彼女も相当大変な思いをしてきた筈だ。なのにそんな影は微塵も見せずに俺をこうして助けてくれて、自分を投げ出してさらけ出して――
知らず、俺の目から涙が溢れていたのに気付いて、彼女は優しい手付きで拭った。