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愛しては、ならない
第46章 小さな逃避行②
「夕夏……」
何と言葉を掛けて良いのか分からず、俺は彼女を抱き締めるしかなかった。
「……この話、誰にも言ったことなかったの」
「……」
「ママとも、あの時の話は一切しないし……
でも、常に頭の中にはあるの。
人を死に追いやった私は、もう幸せになんてなれない――そう思ってたの……けど」
彼女は、俺の胸を押して、上目遣いで見詰めた。
「高校入って……あの若いお母様と歩いてる西本君を見て……
私、あんな風に人を愛したいって思ったの」
「――え?」
俺の胸がバクン、と大きく揺れた。
「西本君が、お母様を見詰めるあの目……」
夕夏は、瞳を溢れそうに潤ませ、俺の瞼に触れる。
「あんなに優しく、熱く見詰めて……きっと西本君は凄くお母様を大切に思ってるんだろうな……て思った。
それで……私も、あんな風に……見詰めてもらえたらって……」
「……夕夏」