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愛しては、ならない
第47章 埋まらない溝
「僕は……菊野さんを抱いていない」
「なっ……」
清崎の頬が痙攣するのを見詰めながら、彼は胸の中で思う。
――嘘は付いていない。
彼女の身体に触れ、絶頂へ導いたけれど、自分自身を彼女の中へ放った訳ではないのだ。
彼女にはもう触れない。二度と触れるつもりはない。
彼女は、俺が汚してはならない。
「晴香も……剛と菊野さんを引き裂くとか、もういいんじゃないかな?
大体が、あの二人は結ばれるのは不可能なんだから……
周りが壊そうとしなくても……じきにダメになるさ」
そう言いながら彼は心を痛めていた。
剛と離れる事になったら、あの女(ひと)は泣くだろうか。
悲しんで、何日も、何十日も涙を流すのだろうか。
だが、そんな彼女に手を差し伸べる事も自分には許されない。
そんな資格は自分にはない……