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愛しては、ならない
第47章 埋まらない溝
菊野の綺麗な瞳が涙をたたえ、落ちる寸前の表情も彼を魅了した。
昔、こんな感情になった事があった――
今よりもずっと幼い頃、好きになった女(ひと)のくるくる変わる瞳の色に心が踊った。
憎しみの言葉をぶつけて彼女と別れてしまったが、剛と菊野も、あんな風になってしまうのだろうか?
出来れば、憎み合ったり悲しまない最後がいい、と彼は思う。
だがそんな都合の良い結末などあり得ない事も知っている。
あの二人がもっと図太く狡猾なら、表面上は仲の良い母子の振りをして、関係を「上手に」続ける事が出来るのかも知れない。
だが、二人は純粋に惹かれ合った本物の恋人だ。
そんな器用な二人ではない。