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愛しては、ならない
第47章 埋まらない溝
誰からなのか察した清崎は、表情を固くする。
森本が出るのを躊躇う様に画面を見詰めるのを見て、彼の腕に軽く爪を立てて囁いた。
「早く、出れば?」
「……」
彼は何回かコールを聞いてから出る。
「……もしもし」
『も……森本君、ごめんなさい……今、大丈夫……?』
菊野の声は、たったそれだけ言葉を発しただけで彼の鼓膜も身体も蕩けさせる。
舞い上がってしまうのを清崎と菊野に気取られないように、わざと素っ気なく返事をする。
「そんな心配をする位なら、掛けませんよね、電話なんて」
向こうで彼女の息を呑む気配を感じ、彼は少し焦り、付け加える。
「……な――んて、冗談ですよ……
どうしましたか?
悟志さんとお話出来ましたか?」
『……あ……あのね……』
彼女のくぐもった声に、緊迫したものを感じとり、森本はスマホを両の手で持つ。
「……何かあったんですか」