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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

『剛……良く聞いておけ……
菊野は僕の物だ――!』
「……っ」
あの夜の悟志の叫びが、まるで今放たれたかの様な衝撃を受け、私は震えて自分を抱き締めた。
悟志は剛の事を何も覚えていない。
倒れた夜の記憶も、剛に関する事だけが抜け落ちているらしかった。
真歩と祐樹との会話を聞く限りでは、どうやら他にも細かい事を忘れているようだったが、家族の事、自分の仕事の事、趣味の事などは以前と同じくらいに把握している様に見える。
今日のところは彼も目覚めたばかりだから、あまり質問攻めにするのも疲れさせてしまうので、皆ももう彼には剛の事を話そうとはしなかった。

