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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

「こら――菊野っ!
そんなメソメソした顔をいつまでもしてるんじゃないわよ――!」
「ひいっ!!ごめんなさっ……て、真歩……ビックリするじゃない!」
鏡の前で鬱々としていたら、後ろから真歩に怒鳴られて、私は胸をバクバクさせる。
真歩はコロコロ笑って私の背中を叩く。
「剛君が女の子と家出しちゃったショックはわかるけどさ、彼もお年頃だし、反抗期だと思ってバーンと構えてなよ!
今にフラッと自分から帰ってくるって。
それに悟志パパが起きたんだから、そっちを喜ばないと!!でしょ」
「う……うん……本当にそうだね」
真歩の口調には何処か含みが感じられて、私は内心ドキリとする。
彼女は、一見いつもと変わらない様に見えるけど、その胸中はどうなのだろう。
悟志は、以前から剛と私を疑っていた。
真歩にもその相談をしていた筈だ。
遊園地の一件の時、真歩はそんな彼の事を笑い飛ばしていたが……
今はどうなのだろうか。
悟志と同じ様に、私の気持ちに気づいているのではないだろうか?

