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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

「う……うん……そうだね」
「菊野……」
「……なあに?」
「そ……その……僕が倒れた時……
君とその……」
「――っ」
言いにくそうに口ごもる悟志だが、私はギクリとし、つい身体が強張る。
「僕は覚えてないんだけど……
君と……抱き合って……それで、真っ裸で倒れた……って」
「……悟志さん、全然、覚えて居ないの?」
つい、慎重な物の言い方になってしまう。
悟志は私を抱き締める力を少し込めて、大きく溜め息を吐いた。
「覚えてないよ……ああ、惜しいなあ」
「……?」
「君をどんな風に抱いたのか忘れるなんて……なんて勿体ない!」
本当に悔しそうに言う彼に可笑しくなり、吹き出してしまった。
悟志は尚もぶつぶつ言う。
「大ショックだよ……だって……僕はつまり、生まれたままの姿で運ばれたんだろう?
こんな恥ずかしい事ないって……」
「うふふ……悟志さんは……鍛えてるから誰に見られても恥ずかしくないわよ」
「いや、そう言う問題じゃなくて」
私がクスクス笑うと、つられて悟志も笑った。

