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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

「悟志さん、今日は疲れたでしょう?もう休んだ方がいいわ……」
私は、結局悟志に何の言葉を掛けるべきなのかわからず、取り敢えずこの苦しく切ない気持ちから逃れたくて言った。
眠っている間だけは、何も考えなくてすむ……
「いや……散々寝たから……眠るのも飽きたね」
「うふふ……悟志さんったら」
「やっと笑ったね」
「……」
悟志は、私の頬に触れて、嬉しそうに笑った。
長い間ベッドで臥せっていたとは思えない程に精悍に見える彼には驚いてしまう。
「悟志さん……お……お帰りなさい……」
私は、彼の手を握るが、どうしてもその真っ直ぐな瞳を見詰める事が出来ずに俯く。
すると彼は快活な笑い声を上げて、私の顎を掴み上を向かせた。
「そうだね……あっちの世界から、菊野と祐樹の元へ帰って来れたんだよな……」
キラキラ輝く黒目には私が映っている。
その目元は祐樹によく似ていた。

