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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

悟志が低く、地を這う様な呻き声をあげながら深く深く突き上げた瞬間に、私の中へと精が流れ出す。
私も同時に果て精を受け止めながら、シーツを握り締める。
剛と烈しく交わった後の、気だるく甘い時間を思い出して、無性に切なくなって目の奥が熱くなった。
――こんな時、剛さんなら……
あの涼やかで低い声で、耳元で囁いて……
『すいません……烈しくし過ぎました……
でも……菊野さんが悪いんです……
俺がこんな風になるまで誘惑した貴女が悪い……』
私が真っ赤になって彼を睨めば、彼は苦笑いして私を抱き締めて……
『やっぱり……菊野さんは悪くありません。全部、俺のせいです……
俺がどうしようもなく、菊野さんに夢中だから……悪いんです』
この身体に残った彼との甘い交わりや、鼓膜に貼り付いた彼の恋の言葉を、記憶の中で反芻してみても、あの時間に戻れる訳もない。
月日が経つうちに、この記憶も、身体に残る感覚も消えていってしまうのだろうか。
「……っ……」
悟志のまだ収まらない烈しい息遣いを背中に聞きながら、堪えきれずに嗚咽してしまう。

