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愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別
運動音痴の筈の菊野が猛スピードで走っていき、真歩は中々追い付かなかった。
教室から一階まで降り、菊野は保健室に駆け込んだのだ。
「えええ――っ」
思わず叫び、保健室へと入ると先生の姿はなく、菊野はベッドに突っ伏して泣いていた。
真歩は彼女の背中を撫で、なんと慰めたら良いのか分からなかったので、取り敢えず
「菊野、足速いじゃん。あれだけ走れるなら陸上部のエースにもなれるよ」
と、彼女の激走を讃えてやった。
彼女は肩を震わせ、グズグズ泣きながら言う。
「わたじ……まぢがっでる?」
「ううん……間違ってないよ」
真歩はしゃくりあげる菊野の背を優しく擦ってやる。
「あの子達さ、菊野がボーッっとしてる割に、他の学校の男子にモテたりするからやっかんでるんだよ」
「……モテなくていい」
「そうねえ、大勢の雑魚キャラよりも、一人の王子さまよねえ」