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愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別
菊野の言う「ときめき」という物は、やはり大好きな絵本に出てくる王子様の優しさだとか、絵本の中の不憫な幼い双子が懸命に生きようとする姿を見て
「胸がきゅうっ……となるの」ということらしい。
他のクラスメイトにそんな話をした時には、皆から「はあ?」「何それ」「バカみたい」
と散々言われていた。
真歩も内心(なんじゃそりゃ……)と思いながら、「まあまあ、人それぞれの好みとかペースがあるじゃない」
と菊野を擁護したが、クラスメイト達のからかいは止まらなかった。
「そんなに王子さまが良ければさあ、ほら、そういうオタクが好きそうなお人形のお店で可愛い人形買って、王子さまの格好させて飾っとけば?」
「あ――、なんだっけ、あの変なパンツとか?」
「そうそう!!ちょうちんパンツ――」
「あははは」
「そんで何?毎晩、抱っこして寝るの?」
「きも――い!!」
菊野は、ニコニコ笑って皆のからかいを聞いていたが、突然カッと目を見開き、机をバアン!と拳で叩いて立ち上がり怒鳴った。
「き……キモくないもん!
私は……王子さまみたいな人と結婚して……可愛い双子のママになるの――!」
初めて聞いた彼女の怒鳴り声に驚いて皆が呆気に取られる中、顔を真っ赤にした菊野は教室を飛び出し、真歩はその後を追った。