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愛しては、ならない
第51章 ナイトメアの後で
その姿を打ち消そうと、俺は唇を強く噛み締めて烈しく首を振る。
消えろ……頼む……消えてくれ。
貴女との想い出など、もう思い出したくもない。その少女の様な笑顔も、鈴を転がすような軽やかな笑い声も、細くてたおやかな指先も、
抱き寄せた時にふフワリと薫る甘い髪も、抱かれた時にしか見せない恍惚とした表情も。
消したくても、この目の奥に貴女が焼き付いて、耳に貴女の声が残り、この身体の隅々に染み付いた貴女の名残が俺を苦しめる。
俺は尚も硬さを増す獣を握り締めたままで低く呻いた。
「……頼む……もう、勘弁してくれ……っ」
その時に、俺の胸に廻されていた夕夏の腕が強く抱き締めてきた。
ハッとした俺は、右手を獣から離そうとしたが、素早く彼女の小さな手が俺の右手ごと獣を包み込んできた。