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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
小さい溜め息の様な微かな風を耳元に感じた時、頬に冷たく柔らかい物が当たった。
それはとても優しくて、甘やかな感覚だった。
もっと、もっと触れて欲しい、と思い手を伸ばした時、シャボンの薫りは遠退いてしまう。
――待って……行かないで……側にいて……
私は懸命に重い腕を伸ばした。
すると、一瞬強く手を握られて、また離される。
「ま……って」
気が付けば、私は小さく叫んで、瞼を開けていた。
目の前には、真っ直ぐな前髪の間から覗く涼やかな切れ長の瞳があった。
「つ……よしさん……」
呟いたその時、彼のしなやかな腕が私を強く抱き締めた。