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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
「……俺が、誰と居ようと菊野さんには関係ないでしょう」
案の定、冷たい返答がかえってきて、胸が深く抉られる痛みにまた涙が溢れる。
彼の声は、いつもよりも低く、怒りを押し殺しているように聴こえた。
怒っている。彼は怒っているのだ。当然だ。こんな私を好きだと言ってくれた彼は、その事も後悔しているに違いない。
「か、関係なく……ないわ……私……は」
――貴方を愛してるんだから、と胸の中で言葉が膨れ上がり、吐き出してしまいそうになる。
でも無理矢理に塞き止めて、彼と私を徹底的に遠ざけてしまうであろう言葉を口にした。
「……貴方の……母親……ですもの」