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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
言ってしまった。
矛盾に満ちた母親という言葉を。
母親だと思うのなら、何故彼に心も身体も開いたの?
一度でも愛してる、だなんて言ったの――?
自分で自分が可笑しくて、笑いだしそうになる。
嗚咽と共に笑いが込み上げてきて肩が大きく震えた瞬間、突然に腕を後ろから掴まれて、強引に前を向かせられた。
驚きに叫びそうになったが、鋭く光る彼の瞳の力に声が出なくなる。
彼の手が私の両腕をしっかりと捕まえていて、触れられた其処がたまらなく熱かった。
――ダメ、そんなにじっと見ないで……そんなに強く私に触れないで……
気が変になってしまう……
おかしな事を口走ってしまいそうになる……
彼の目から逃れようと思わず瞼を閉じると、唇を塞がれた。