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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
その言葉が理解できず、私は彼を呆けた様に見上げ暫し絶句するが、彼が言い聞かせる様にゆっくりと話す。
「……折角あんな名門の進学校に入れて頂いたのに申し訳ありません……他の学校の中途編入試験の申し込みをしようと思っています」
他の国の言語を聞いているのか?と思える程、彼の話の内容が全く頭に入ってこない。
「剛さん……なに?一体……何の話なの……?」
「……この家を出て、一人で暮らしたいんです」
「――!?」
「花野さんが、言ってくれたんです……
どうせ男の子は遅かれ早かれ家を出るのだから、他の学校へ行きたいのなら、普段住んでいない郊外の一軒家があるからそこから通えばいいって……」
「お……お母さんがそんな事を?
私は、私は何も聞いてないわ、そんな事!」
思わず声を荒げ、彼の手を握り締めるが、剛は微笑みを崩さない。