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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②
ソファにその華奢でたおやかな身体を投げ出して眠る彼女の無防備な姿は、俺の中で燻っていた恋情と欲情に火を点けるには充分すぎる刺激となった。
昨夜から朝にかけて、この身体に溜まっていた欲を夕夏の身体に存分に吐き出した筈なのに、菊野の姿をこの目に映した瞬間から、菊野に身も心も欲情してしまう。
透けるような白い首筋、額にかかる艶やかな前髪、愛らしい瞼、花弁のような紅い唇――
彼女の頭の先から爪先までじっくりと眺めていくうちに、身体の奥が疼き始めた。
――まずい。彼女をこれ以上見たら駄目だ。ずっと見ていたら、何もかも彼女に囚われて、自制心を無くしてしまう。
その全てに、触れたくなってしまう……
「……っ」
顔を逸らそうと思ったその時、彼女の瞼がピクリ、と痙攣して、涙が頬を伝った。
俺は思わず彼女に近付き、手を伸ばしていた。