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愛しては、ならない
第54章 四年後
剛が家に居ない事に一番慣れないのは菊野だったようだ。
悟志は、四年経った今でも剛の事を思い出せないままだ。
だが、菊野が寂しがっているのを知っている彼は、剛が居なくなってから、以前にも増して菊野に優しく接するようになった。
悟志は退院後、一年程は定期的に健診に通っていたが、あの後倒れたりすることもなく元気にしている。
一時期精神的に不安定だったようだが、ここ最近は穏やかに過ごせている。
ただ、剛が居なくなりこの家に子供が自分だけになったせいだろうか。菊野の心配性が酷くなった様な気がする。
まあ、母親と言うものは割りとそんなものらしいから、気に病む程では無いのだろう。
酷くなった、とは言っても、祐樹の彼女の母親の様に過干渉ではない。
しかし時に、菊野が祐樹を見詰める瞳の中に、とてつもなく切なく苦しい感情が見え隠れするのだ。
それを感じ取った時、どうしたら良いのか分からないので、素知らぬ振りをして居るが――