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愛しては、ならない
第54章 四年後
剛の弾くピアノの音色は不思議で、華やかな旋律を奏でても何処か物悲しさがあり、どうやって弾いたら彼のように弾けるのか、と本気で研究をした事もある。
「剛みたいに弾けない――!」
と悔しがると、花野がこう言った。
「音楽って言うのはね、同じ音でも奏でる人によって、歌う人によって色が変わるのよ……
人の生き様と同じね。その人の人生は……その人にしか生きられないの。
だから、剛さんにしか奏でられない音があるように、祐樹にも、あるのよ?
祐樹にしか出せない音がね……」
「――いきざま、てなあに?」
と聞くと、花野は祐樹の頭を撫でて優しく笑って言った。
「う――ん、祐樹にはまだちょっと難しいかも知れないけど、皆が必ず持っている物なのよ」