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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ



「お伽話に出てきそうね……」




森の中の、白を基調としたお菓子を思わせる可愛らしいチャペルを一目見て、私は深い溜め息を吐いた。

新幹線を乗り継ぎ、聞いたことのない名前の駅からタクシーに揺られて30分程して着いた式場が私はすっかり気に入ってしまった。

交通の便は良いとは言えないが、森の中のチャペルの独特な雰囲気に惹かれ、ここで挙式をするカップルは多いらしい。

ロケーションも抜群なので、映画やドラマの撮影にもよく使われるらしい。

敷地内にはテニスコートやアスレチック等もあり、ホテルもある。

挙式したカップルは勿論、参列客も泊まれる。

ホテルのレストランの料理も評価が高く、食事を目当てにリピーターも多い。

四年間、音信不通だった真歩から結婚式の招待状が来た時、私は信じられなくて、手紙を持ったまま呆然とポストの前で立ち尽くしていたのだ。

学校から帰ってきた祐樹が、呆けた顔で外に突っ立っている私を見て


「母さん、何をしてるのさ~泣きそうな顔して」

と言ってきて、漸く我にかえったのだった。





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