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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ
そして、祐樹に言われて私は自分が涙ぐんでいることに初めて気がついたのだ。
本当に信じられなくて――真歩が、また連絡をくれたという事実、彼女が結婚するという事が――
四年前、私たちの別れは突然に訪れた。いや、その前から予兆はあったのかも知れないが。
高校生の時、悟志が私の前に現れてから、その運命の歯車は廻り始めていたのかも知れない。
真歩がいつから悟志を想っていたのかは謎なままだが、真歩は彼を想いながら、ずっと私の側にいて友達でいてくれたのだ。
『悟志さんの事も、あんたの事も好きなのよ』
彼女の言葉には嘘はないのだろう。けれど、きっと堪らなく歯痒くて切ない眠れない夜を幾つも彼女は越えてきたに違いない。
悟志に大切にされながら、他の人を想っていた私を軽蔑して、憎んでも当然だと思う。
四年前のあの日、悟志が自殺未遂をし、剛が姿を消したショックで混乱していた私は真歩に自分の罪を打ち明けようとしたが、真歩は私を突き放した。
私もどうかしていたと思う。真歩に話してどうなる?真歩を困らせてしまうだけなのに。