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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ
真歩はあの番組に出演した後、実家には帰らずに茨城で塾講師の仕事をしていたのだが、雲居が真歩とどうしても会いたくて、探偵を雇って所在を調べたらしい。
雲居は真歩の勤務先を調べ、自らその英語塾に通い、真歩に猛アタックした。
真歩は「英語検定の二級に受かったら結婚するわ」と彼に冗談で言ったらしいが、彼は猛勉強してみごと合格したのだ。
「……今思えばさあ……一級にしときゃ良かったわ――」
本気で悔しそうに真歩は言うが、私は笑ってしまう。
「そんな事をしなくても、オッケーしてあげれば良かったじゃない」
「だって、なんだか悔しかったんだもん」
「悔しいって?」
真歩は、指でドレスの光沢ある布を弄びながら頬を染めて口ごもる。
「年下の癖に、いちいち私のツボにはまる事をやってくれるんだもん……なんだか負けてるみたいで悔しい」
「ええ?」
彼女の返答に、雲居に相当愛されている様子を感じて、胸の中が甘酸っぱくなる。
――良かった、本当に良かったね……真歩――……
気が付けば私の頬に涙が伝っていた。