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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会
俺も彼女の細い指を飾るリングに気付いていたが、彼女にハッキリと言われ、頷いてみるしかなかった。
「おめでとう……」
「少しは、妬いてくれる?」
悪戯に目の奥を輝かせる清崎は、四年前とは違う美しさを全身から放っていて眩しかった。
俺は目を細めて小さく頷く。
「そうだな……妬くよ。相手の奴は幸せ者だな」
「ふふ。そうよ、凄く幸せにしてあげるし、私もうんと幸せになるの」
彼女は俺の返答に満足げに口の端を上げ、時計を見た。
「もうそろそろね……彼が来るわ」
「彼ってまさか……」
その時、店のドアが開いて外の湿った空気が入り込み、俺は振り返り、四年ぶりに会う友人の姿をみとめた。
彼はユカタン――友佳を伴い濡れた傘を優雅な仕草でたたみビニールに入れてこちらを見ると、昔と変わらない飄々とした笑顔で口を開いた。
「やあ、剛。元気だった?」
「森本……」
俺は奴と対峙し、知らず知らず拳を強く握りしめていた。