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愛しては、ならない
第58章 再会
「――よ~し、今度は上手く出来た~!」
私は、キッチンで二度目に焼いたスポンジケーキが成功して、嬉しさと安堵で一人拍手をするが、何だか虚しくなり、溜め息を吐いた。
お気に入りの赤と茶色のギンガムチェックの可愛いエプロンの装飾のリボンを指で弄び、ひとりごちる。
「このエプロンだって……剛さんに見てもらえるわけじゃないし……」
口に出してから私は首をブンブン振った。
「あああ――っ何を言ってるのよ私――!今日は、お掃除のついでに……いや……ついでって言うかこっちがメインだけど……
サプライズに剛さんのバースデーケーキを作りに来たのよ!私のエプロンなんてどうだっていいし!」
――それに……剛さんに会わずに帰るんだから……
私は、今や剛の住み家となった花野の家のキッチンで、生クリームを機械でかき混ぜながらそんな風に思い、寂しさに鼻の奥がツンとなった。