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愛しては、ならない
第58章 再会
涙がクリームに落ちそうになって慌ててハンカチで目元を拭う。
剛がこの家に住むようになってから四年。
彼が居ない時を見計らっては掃除しに来ていたが、彼は几帳面でいつも家の中は整然として綺麗にしてあるので、私のする事は殆ど無かった。
流石に彼は庭の草取りまでは手が回らないだろうと思って庭の事をしようとするが、何と、それさえもやっているではないか。
大学にバイトに、家の事に……一体彼はいつ眠るのだろうかと思った。
私は、せめてこれくらいはと思い、来たときには野菜やレトルト、カップ麺を買って来たり、作った焼菓子を置いていったり、花をリビングに飾って行ったりした。
今日も、夏の花を買って持ってきた。
花瓶に生けながらふと、これじゃあまるで、頼まれていないのに勝手に家に上がり込んで世話を焼くストーカーみたいだ、と思ったが、
他に彼の為に出来ることが思い付かないのだ。
それに、直接彼に会うことは出来なくても、彼が普段居る空間で彼を少しでも感じたい――と言う気持ちもあった。