この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第58章 再会
「ひっ!」
思わず叫ぶ私に森本は『あ、来ましたか?……じゃあ僕切りますね。菊野さんファイト!!』
と言って電話を切ってしまう。
「な……なな何がファイトなのよ――!」
私はスマホを手に右往左往するが、玄関から大きな声が聞こえ、またビックリしてしまう。
「あの――!!いらっしゃいますか――!!」
「ひいいっ……は…はい!居ます居ます――っ」
慌てて走っていくと、来客はお隣の奥さんだった。
物凄い雨の中で傘を差し、右手に家の鍵を持って私に差し出す。
「あんまりすごい雨だから家の雨戸を閉めようと思って外へ出たら、お宅の玄関のドアにこれ、刺さったままだったわよ――!」
「あっ……す……すいません――!ありがとうございます!」
私は恐縮して鍵を奥さんから受け取り、頭を何度も下げる。
物騒だから気を付けましょうね、とにこやかに言って奥さんは戻っていった。
「うわあ……めっちゃ降ってる」
雨と言うよりは強いシャワーが天から注いでいるようだった。
水浸しになったポストの中から、ビニールに入れられた新聞を取り出したが、ほんの何秒か外に出ただけで濡れてしまった。