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愛しては、ならない
第59章 再会②
雨は小さくなるどころか烈しさを増すばかりだった。
傘も差していない俺は正にずぶ濡れだったが、この雨では、例え傘があったとしても全く意味がないのではないだろうか。
地面に強く叩きつけられた雨水は跳ね返り足元を濡らし、靴の中も勿論水浸しだった。
タクシーに乗ることも考えないでもなかったがこんな濡れ鼠の客を乗せるだろうか。
それに、多分、電車がいつ動くかも分からない状態なのだから、タクシーも混んでいるのだろう。
早鐘をうつ心臓を鎮め、呼吸を整えようと立ち止まり身体を折り膝に両手をあてて地面に向かって切れ切れに呟く。
「……本当に……何を……してるんだ……俺は……菊野も……もう帰ってしま……ったかもなのに……」