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愛しては、ならない
第59章 再会②
――――――――ようやく辿り着いた。
着ている物は全て水を含み重みを増して肌に貼り付いて、前髪からは滴が休みなく滴って居る。
逸る気持ちのまま玄関の鍵を開け、彼女の小さな靴を見つけて有頂天になるが、こんな姿のままで、驚かせてしまいやしないだろうか?と思う。
俺は濡れたシャツを絞り、リビングへ向かう前にバスルームに寄り、バスタオルで軽く身体を拭いて、頭に被ったままで静かに歩いた。
家の中は静かだった。
だが、この中の何処かに彼女が居ると思うだけで、甘く軽やかな調べが聴こえてくる様な錯覚に囚われる。
菊野――貴女は、俺に生きる意味を、人を愛する気持ちを、そして愛を手に入れられない哀しみを――俺に教えたんだ。
貴女は俺の全部なんだ――