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愛しては、ならない
第59章 再会②
どれ程の距離を、どれ程の時間をかけて走ったのか。
頭上の厚い黒い雲達は、ひとかけらの隙も見せずに空を覆い尽くし、昼間なのか夜なのかも判別することが出来ない。
そういえば、ポケットの中のスマホは水浸しになっているのではないだろうか、と一瞬頭を掠めたが、今の俺にはそんな事さえもどうでも良かった。
菊野、菊野、菊野……
今、貴女はどうしている?
貴女の事だ。嵐のような強い雨に怯えて部屋の隅でその華奢な身体を自分の細い腕で抱き締めて震えているのではないか?
いや……それとも、誰かに――悟志に抱き締められているのか?
彼女が彼の胸の中に身体をもたせかけている光景を思い、俺は足を早める。
早く、早く戻らなければ。
貴女を捕まえるんだ。
悟志の元へと戻ってしまう前に、捕まえる。
俺は、貴女を捕まえる。