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愛しては、ならない
第59章 再会②
彼女の頬に手を伸ばすが、濡れて冷えた指で彼女に触れるわけにいかない――と思い直し、拳を固めて深呼吸する。
時計を見ると、もう夜の七時になろうとしていた。
テレビのニュースでは、豪雨と強い風の為に電車が運転見合わせ、と伝えている。
駅前のロータリーで、タクシーに乗ろうとする人達が列をなしている映像も映し出された。
まるで一年分の雨が降り注いでいるのかと思わせる程の烈しい雨は家の外壁を叩き、バチバチという音を立てている。
菊野のスマホが緑に点滅しているのを見て、手に取って見ると、悟志からのメールだった。
ロックさえしていない処が菊野らしい、と俺は小さく笑う。
『もう帰っているかい?酷い天気の中、大変だったね。大丈夫かい?濡れてしまって風邪をひいたら大変だからね。
こんな日に限って残業になってしまったよ。
あ、そうそう、祐樹は今夜は友達の家に泊まるそうだよ。
僕も頑張ってなるべく早く帰るからね』
悟志のメールを読み、俺は菊野のスマホの電源を切った。