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愛しては、ならない
第59章 再会②
俺の誕生日を初めて祝ってくれたのは菊野だった。
記憶にないだけで、両親が一度でも祝ってくれた事もあったのかもしれないが――そんな事をあの両親がするわけがないと思うが、万が一そうだとしても、俺の命を祝福してくれたのは菊野が初めてだ。それでいい――
俺の為に時間を割いて、手間を掛けて、こんな物を作ってくれたなんて。
目の奥が熱くなり痛みを覚えるが、涙が生まれる前に冷蔵庫を閉めて菊野の側へと行き、隣に静かに腰かけた。
ソファの脇に投げ出された白くて折れそうな手首に指で触れると彼女の優しい温もりが伝わってきて、また泣きそうになる。
こんなに涙腺が弛むのは、かつてない事だった。
四年前、菊野と別れたあの日、大声を上げて泣いたが、あれ以来ではないだろうか。