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愛しては、ならない
第59章 再会②
トウルルルルルルルルルル……
リビングの固定電話が高い音で鳴って、菊野は身体を震わせる。
俺は彼女の瞳から目を離さないままで、ゆっくりとソファから手を離して立ち上がり、受話器を取る。
「――はい……綾波です」
『もしもし……西本です……剛君かい?』
四年振りに聞く悟志の声だった。
低く、厚みのある、それでいて清涼感のある耳障りのよい声は彼の人となりを表しているようだ。
俺と彼は、四年間会っていない。彼が入院した病院でも俺は彼に会っていない。つまり、俺の事を全部忘れている彼にとっては、俺と初めて話すという事になる。