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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
『菊野さんは、帰しません』
剛が電話で悟志に言い放った言葉が私の頭の中でリフレインされていた。
当の剛は、何事も無かった様に窓のカーテンを閉めて、リモコンでテレビのチャンネルを切り換えてはニュースを見ていた。
平然としたその様子は、まるで以前と同じ――西本の家で、普通に家族として一緒に暮らしていた頃と変わらなく見える。
私は固まったようにソファから動けずに、彼が涼やかな雰囲気のある瞳をテレビに向けて、形のよい唇が何かを呟くのを呆けたように見ていた。
「……ですね」
彼がこちらを振り返って言って、私は仰天してしまった。
「え……えええ?な、なにっ?」
変な声で叫ぶ私を彼は目を丸くして見る。