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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
触れるだけの一瞬のキスだったが、彼の唇からワインの甘い薫りが伝わってきて、一瞬で身体中に酔いが廻る。
唇を離し、頬にそっと触れて笑う彼を呆然と見上げたが、彼はまた何事も無かった様に食事の支度を始めた。
今起こった事が理解できず、私はただワインのボトルのラベルを眺める振りをしながら剛の後ろ姿を時おり盗み見ては頬を熱くする。
――剛さん……何を考えているの?
森本君の言う通り……私に会うために帰ってきたの?
そして……今……私にキスしたのは……何故……?
「さあ、いただきましょう」
「……っ……うん……そ、そうね‼」
剛の表情は穏やかで、別れたあの日の激情を迸らせていた彼とは別人に見える。
私は、キスの事を今更聞けなくなってしまい、曖昧に笑った。