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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
いけない、逃れなければ、と思っていても手足に力が入らず、彼の胸を腕で押すこと位しか出来ない。
私は長い間忘れていた――彼の薫り。真っ直ぐな前髪の間から覗く鋭く、でも時に優しい瞳の色。彼の唇と舌から生み出される蕩ける甘さ――
抗おうとしても、彼の熱い吐息が私を狂わせ、身体を麻痺させ、思考を停止させる。
彼の指が髪を優しく掻き抱き、首筋を悩ましく撫で上げ、私は甘い声を発してしまいそうになる。
彼にねだってしまいそになる――私を愛して、と――
「……だ……だめ」
彼の唇が離れた時、やっとの思いで一言、抵抗の意を示す。
だけど剛は優しく涼やかに笑って首を振り、もう一度口付ける。
逃げようとしても、巧みなキスで呪縛する。
何度も何度も唇を貪られているうちに、私は糸の切れた人形のように彼の胸の中にもたれ掛かっていた。