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愛しては、ならない
第62章 愛しては、ならない②
「……俺……働きます」
「……え?」
「何処か遠くへ二人で行って……住むところを借りて……」
「……」
「誰も俺達を知る人間の居ない土地で……普通の恋人同士として…夫婦として……いや……何でもいいんだ……菊野と一緒に居られるなら俺は何でも――」
最後の方は声を詰まらせ、私の乳房に顔を埋めて小さく震えていた。
彼を力一杯抱き締めたくなる衝動を堪え、私は大きく息を吐く。
夢物語を語っているのではなく、彼が本気で言っているのが分かった。
嬉しくて切なくて喜びの涙が溢れてしまう。でも私は……
「――剛さん……貴方は……幸せになって欲しいの」
「……」
彼は、涙を浮かべて顔を上げる。
その表情に胸が締め付けられて苦しかったが、私は無理矢理言葉を続けた。