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愛しては、ならない
第64章 エピローグ




「ってえ……」



鳩尾と後頭部に鈍い痛みを感じ、呻きながら俺は瞼を開けた。

目に飛び込んで来たのは玄関に置いてある、花野が置いていった『医者要らず』の鉢植え――つまりアロエなのだが、花野はそう呼んでいた。

傷や火傷に塗ると薬の効果を発揮するらしいのだ。

『何かに役に立つかも知れないわよ‼』と言って持ってきたのだ。

しかし、鉢は倒れてしまい、葉っぱは無事だが土が溢れてしまっている。

そして、整頓されていたはずの靴が散乱していた。



――そうだ、昨夜、いや先程、悟志がやって来てここで揉み合ったから散らかっているんだ。

俺は重たい身体をどうにか起こして頭に触れると、なんと瘤が出来ている。

悟志が腹を殴り、弾みで俺は転がって壁で頭を打ったのだ。



「おい……仮にも……まあ本当に仮だが……俺は息子なのに、容赦ないな……あの人は」



痛む腹を押さえながら、溢れた土を箒で集めて玄関をきれいにする。

ぼんやりした頭の中で、昨日の出来事が少しずつ思い出されてきた。

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