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愛しては、ならない
第64章 エピローグ
まだ夜が明けきらない時間に悟志はやって来た。
妻を、菊野を取り戻しに。
ドアを開けた途端「菊野は何処にいる――‼」と大声で叫び俺を押し退けようとした。
こんな時間に、こんなタイミングで押し掛けてくるのは彼しかいない――そして、彼は菊野を奪い返しに来たのだという事は分かっていた。
だが、易々と引き下がる気はなかった。
俺は「菊野は帰さない‼」と、精一杯の迫力を込めて言ったが、悟志は大きな目を更に大きく開いて、吃りながら掴み掛かってきた。
「……だ……ダメだ……だだだダメだダメだ‼きっ菊野は渡さない‼」
「そう言われてすんなり渡す男が居ますか」
彼はパジャマの襟元を掴み、拳を振り上げるが、俺を殴れずに拳を震わせていた。