この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第64章 エピローグ
その微笑みは 空に掛かる虹の様だ
遠くから見える姿は これ程に美しいのに
近付けば近付くほどに 霞んでいく
追い掛ければ追いかける程に かたちを無くして
この手に抱こうとしても 掴めない
稲川が切々とバラードを歌い上げる中、誰かの「あ……虹」という呟きが耳に入り空を見ると、見事な虹が二重に空をまたいでいた。
「この手に抱こうとしても掴めない……か」
――菊野もこの虹を見ているだろうか。
彼女は今、笑っているのだろうか。
もしも幸せに笑っているならばそれでいい……
俺は眼鏡の位置を直す振りをして指で涙を拭った。