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愛しては、ならない
第64章 エピローグ
「――?」
庭でシーツを干している最中、呼ばれた様な気がして、私は手を止めた。
『――き……くの……』
長い間耳にしていない低い涼やかな声が、頭の奥で響いたような……
厚い雲が切れて、眩い日射しで周りの景色や白いシーツが一気に輝き、手を翳して目を細める。
今頃、祐樹が出演するイベントも再開しているだろうか。雨に降られて、祐樹も剛も、濡れて風邪をひいたりしていないだろうか――?
ケーキを、剛は受け取ってくれたのだろうか――
そんな事を考えながら入道雲を見上げると、鮮やかな七色の橋が二つ空に架かっている。
「――綺麗……」
両手を伸ばすが、掴めるはずもない。
私は俯いて、やり場のなくなった腕を降ろし、空っぽの両の掌を握り締めた――
――THE END――